安部 譲二 著
筆者自身が、4年間服役した府中刑務所を舞台にした短編の物語りを集めた本である。
府中刑務所は、再犯で、刑期が6年未満の懲役者が収監されているとのことである。
刑務所内での暴行事件などがニュースになっているが、普通の人は、殆ど知ることのできない刑務所内の作業や収監者の心情が飾らない表現で業界(?)用語も交えて描かれている。
ソフトボールは限られた運動時間に素早く試合を進めるための独特のルールで行われる。また、石鹸などの日用用品を勝敗にかけて楽しむ。
最後の物語は、刑期を終えて、まっとうに生きようと決意するが、長年、やくざ生活をしてきた自分が、まっとうに生きれるかと言う不安を描いたものであり、筆者の心情を写した物だろう。
早朝出所というのは、組に絡んだ者が出所する時のことだと言う。
このような者が出所する時は、迎えの車が大勢きて、交通渋滞になるので、交通量の少ない早朝6時に出所させるのだ。
1987年3月10日 初版発行
発行所 (株)講談社
ISBN 4-06-203194-9
C0093 \1000E