芥川 龍之介 著
大正11、12年に書かれた短編の作品21篇を納めたものである。
表題作の他、報恩記、三つの宝、雛、白などの作品が印象に残った。
トロッコは、工事現場で、土を運ぶトロッコに乗ることに憧れる少年の体験を描く。
報恩記は、大泥棒が、過去に救ってもらった商人の急場を助ける、そして、家を飛び出した商人の不良の息子が、最後の恩返しに、大泥棒に成り変わって、打首になる。それをそれぞれの視点で、描く。
三つの宝は、何でも切れる刀、姿を隠すことのできるマント、一飛びに千里を飛ぶ長靴の三つの宝をもつ黒人の王、その王から求婚されるが嫌がる王女、そして、宝はないが、王女を守ろうとする王子が登場する。現実には、三つの宝が宝ではあり得ない。
雛は、貧しくなってゆくために、雛人形を手放す家族の心情を描く。
白は、仲間を見殺しにした白犬が、黒くなる話しである。
その他の作品も短いページ数であるが、さすがに長く読み継がれている作品群だけあり、何となく心に残る。
角川文庫1685
昭和44年7月30日 改版初版発行
平成11年3月10日 改版38刷発行
発行所 (株)角川書店
ISBN4-04-103307-1
C0193 \420E