第5週

母は枯葉剤を浴びた
−ダイオキシンの傷あと−

中村 梧郎 著

ベトナム戦争で、米軍がジャングルに潜むベトコンの兵士を掃討するするため、南ベトナムのジャングル一帯に膨大な枯葉剤を撒いた。
この枯葉剤には、不純物として、猛毒のダイオキシンが含まれていた。
枯葉剤を浴びた木々や植物はすべて枯れて、不毛の地になった。
それだけではなく、枯葉剤を浴びた大勢のベトナムの人々は、身体に異状を起こし、さらには、その子供達は、染色体異状による死産、身体の奇形が発生している。
著者は、この枯葉剤に侵されたベトナムの姿、奇形で生まれた子供、育つことのできなかったえい児・胎児の標本、さらには、枯葉剤の毒性を知らされずに参戦し、自らも枯葉剤による後遺症に苦しむ米軍兵などの姿を写真におさめ、写真展をひらき、枯葉剤・ダイオキシン問題を世界に問うている。
本書にも奇形を持った子供、えい児・胎児の写真が多く納められており、見ていてつらいものがある。
本書の初版から、既に、25年を経ているが、枯葉剤による被害は、今も残っている。
ベト、ドクの兄弟も被害者であるが、同じような被害を持った多くの人々が未だに苦しんでいるのではないかと思う。
枯葉剤は、人体には、無害と言うふれこみで、使用されたことになっているが、米軍は、当初からその毒性を把握した上で、化学兵器として使用したのではないかと告発している。

新潮文庫
昭和58年9月25日 発行
平成11年4月20日 18刷
発行所 (株)新潮社
ISBN4-10-131701-1
C0195 \705E

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