ジェラルディン・ブルックス 著
森嶋 マリ 訳
サラエボ・ハガダーと言う実在する本を題材に書かれた本である。
ハガダーと言うのは、ユダヤ教の「過ぎ越しの祭」で使われるヘブライ語で書かれた祈祷書とのことだ。
本書では、古書の修復家である主人公が、100年にもわたり行方不明になっていた古書の修復を行う祭に、古書の来歴に関わると考えられるものを幾つか見つける。
蝶の羽、ワインのシミ、塩の粒、金具の跡、猫の毛などである。
これらのものがハガダーにまぎれる事になったストーリーと、主人公の現在および生い立ちに関わるストーリーが平行して記される。
500年以上のハガダーの歴史が、ミステリーを解くように語られる。
ユダヤ教とキリスト教、イスラム教の共存した時期、ユダヤ教が異端とされたり、迫害された時期などが描かれる。
これらの宗教の複雑な関係と歴史を感じる本でもある。
2010年1月20日 第1刷発行
発行所 （株）ランダムハウス講談社
ISBN978-4-270-00562-0
C0097 \2300E