長岡 弘樹 著
短編ミステリー集である。本書には、表題作を含め4編が収められている。
各作品とも、大きな事件が起きる訳ではないが、主人公は、起きていることの理由が分からず、それが、重大な事の起きる予兆になっているのではないか、不安になる。
けが人を乗せた救急車が、病院を目前にして迷走する「迷走」
女刑事が、自分が手錠を掛けた犯人に留置が解かれる事を臭わせられ、お礼参りを恐れる「傍聞き」
女性宅が火事になり、消火・救出中に、居るはずの赤ん坊が消える「899」
禁酒の約束をして、更正施設から出た元服役囚が職場から消え、飲み屋に入る所を見て、約束がやぶられたと思い辞表を出そうとする施設長を描く「迷い箱」
短編であるがいずれも密度濃く書かれた作品だ。また、どの作品も予想外の落ちだが、良い後味の裏切りだ。
双葉文庫
2011年9月18日 第1刷発行
2011年12月8日 第2刷発行
発行所 (株)双葉社
ISBN978-4-575-51453-7
C0193 \524E