孔 枝泳 著
蓮池 薫 訳
本書は韓国で実際に起きた事件をもとに小説化したものとの事だ。
職を失い、生活の糧を得るため、単身で、地方の聴覚障害者向けの学校に臨時教師として赴任した主人公は学校が異様な雰囲気である事に気付く。
聴覚障害を持つ生徒だからなのかと最初思うが、何らかの秘密を生徒も教師・職員も隠しているようだ。
列車事故で弟を亡くした少年、寮監や他の生徒からリンチにあっている少女等不穏な感じを受ける。
聴覚障害を持つ教師の一人が突然解雇される。少女を人権センターに連れて行ったためらしい。
少女が、学校で、性的暴行が横行していることを告発したのだ。しかも、暴行しているのが学校の校長や行政室長と言った学校のトップだ。
彼らは市やキリスト教教会でも貢献している重鎮だったため、教育長、警察も動いてくれないが、主人公や人権センターのメンバーによって、マスコミ報道される。
報道により、解決するかに見えたが、裁判で、主人公他告発したメンバーの過去の過ちが公開されたり、被告側が親族へお金をちらつかせ訴状の取下を行わせたりして、校長たちはごく軽い刑罰に終わってしまう。
この事件は、一時的には、社会を騒がせるが、学校を大きく改善できる事無く終わってしまったそうだが、本書が記される事により、事件が再度、問題視され、学校の廃校や法律改正に結びついたそうだ。
ミステリ的要素、法廷での攻防等物語として、ページを進ませられるが、内容は非常に重いものであった。
障害者学校という一種閉鎖された社会での暴走と思う。特殊な環境なので、一層のオープン化が必要なのではないかと思った。
2012年5月30日 発行
発行所 (株)新潮社
ISBN978-4-10-505553-0
C0097 \1600E