原田 マハ 著
アンリ・ルソーの絵画を題材にしたアートミステリーである。
筆者はキュレーターでもあり、画家や絵画に対する知識と想いが記された作品だと思う。
冒頭、美術館で監視員をしている織絵を美術館長と新聞社の学芸部長が呼び出し、ルソーの絵画展の日本側窓口を担当してくれと頼む。
織絵は、今は、監視員と言う仕事をしているが、かつては、ルソーの研究者として、名を馳せていたことがあった。
そして、謎の絵画コレクターから、MoMAの学芸員ティムとともにルソーの絵の真贋鑑定を依頼される。
真贋鑑定は、絵を見る他に、毎日絵に関連する古書を一章づつ読み、一週間後に真贋判定結果を発表する。
真贋判定結果が、その絵画コレクターの納得できるものであれば、どちらか一方に、その絵の今後の扱いを一任する権限を渡すと言う。
その絵画を狙う美術館、オークション会社、盗品の絵画を追うインターポールなどが登場し、情報戦が行われる。
毎日読む本には、その絵が受け入れられないルソー、ルソーの絵に革新を見いだすピカソ、ルソーの絵のモデルになった人、ルソーの絵に心酔しコレクションを始めようとする人など描かれる。
創作なのかルソーの関係者によるノンフィクションなのか、絵の真贋を極める手がかりになるのか？
織絵・ティムのストーリーの中に、ルソーのストーリが２重に描かれる。
絵の真贋鑑定の結果、そして、その絵の行く先はどうなるか、意外な展開が待っている。
2012年1月20日 発行
発行所 (株)新潮社
ISBN978-4-10-331751-7
C0093 \1600E