デイヴィッド・ベニオフ 著
田口 俊樹 訳
作家がフロリダに住む祖父母をたずね、祖父の戦争体験を聞く。
第二次世界大戦で、レニングラード（サンクトペテルブルグ）は、ナチスドイツ軍に包囲され必死に耐えている。
主人公である祖父レフは、そのとき17歳で、落下傘で降りてきたドイツ兵（実は、既に凍死している）を見に行き、所持品をあさる。
そこにロシアの警邏兵が、やってくる。
レフたちがやっていたことは略奪罪として、その場で銃殺刑にされてもおかしくなかったが、拘置所に連れて行かれる。
拘置所で、脱走兵らしい青年兵コーリャと出会う。
二人は、刑を決定する軍の大佐に、銃殺にされる代わりに、奇妙な命令を受ける。
命令は、大佐の娘の結婚式で作るケーキ用の卵１ダースを一週間以内に持ってくることだ。
こうして二人の過酷な卵探しの旅が始まる。
既に、市内には、卵どころかほとんど食べるものが無い状態になっている。
鶏を守って飢え死にしている老人、人肉を扱っていると思われる夫婦、等にあう。
郊外の村に卵を求めて、極寒の中を歩いてゆくが、そこでも色々な危機に遭遇する。
戦争中にあっただろうと思わせる凄惨なできごとが、次々に描かれるが、元々の命令が奇妙なこととコーリャとレフのやり取りが、滑稽なことから、コミカルな印象も感じさせる本だ。
戦争自体が、ばかばかしいものだと言うことも記したかったのかもしれない。
2011年12月15日 発行
発行所 (株)早川書房
ISBN978-4-15-041248-7
C0197 \900E