ロイド・ジョーンズ 著
大友 りお 訳
ブーゲンヴィル島において、パプアニューギニアからの独立抗争が起きている時代を背景にした物語である。
主人公のマティルダのモノローグで、物語が綴られる。
かつて島には、銅鉱山で働くオーストラリア人が多くいたが、抗争が激しくなり、鉱山が閉鎖され、白人はミスター・ワッツの一人になる。
学校も閉鎖されるが、ワッツが、ディケンズの小説『大いなる遺産』を子どもたちに一章ずつ朗読し、その物語の主人公であるピップの世界を伝える。
ピップと言う名前が、砂浜に書かれているのをパプア・ニューギニア政府が送り込んだ軍隊が見つけ、村人に、ピップという人物を差し出すように言う。
物語中の人物であることを説明しようとするが、『大いなる遺産』の本が見当たらなくなる。
軍は、村人の財産を焼き、ピップが誰か追求する。
やがて、ワッツがピップだと思われる。また、それを否定する人物も軍に捕まえられる。
そして、マティルダにも悲劇が襲いかかる。
マチィルダは、命からがら、島から脱出をはかり、島に起きたことやワッツのことを思い出し綴る。
一つの物語が、人の心に壊すことのできない一つの世界を作り出すことを描いた物語だ。
2009年8月20日 発行
発行所 （株）白水社
ISBN978-4-560-09004-6
C0097 \2300E