ロバート・F・ヤング 著
伊藤 典夫 編・訳
アメリカでのオリジナル出版が1950〜60年代、日本で最初に翻訳・出版されたのが1977年6月、そして、この本の発行が2006年10月と長い期間にわたって読み継がれている作品である。
ファンタジー＆SFと言うジャンルの作品集である。
表題作も含めて、10頁位から100頁位の中短編ストーリー10編から構成される。
表題作の”ジョナサンと宇宙クジラ”は、地球宇宙軍の砲手ジョナサンと宇宙クジラと呼ばれる巨大な宇宙生物のストーリーである。
ジョナサンは宇宙クジラを熱核爆弾で、破壊しようとするが、失敗し宇宙クジラの内部に取込まれる。
宇宙クジラの中には、広い地表と太陽や星空のある小宇宙が形成されていて、約400年くらい前の文明レベルを持つ人々が生活している。
宇宙クジラはジョナサンとテレパシー交信により、その小宇宙と住民の秘密を伝える。
そして、自分の内部にある小宇宙とそこに生きる住民のために自分の命が尽きようとしていることも伝える。
住人が自分の住む世界を自ら汚染・破壊して行っているというのは、人類と地球の関係を想像させ、一種の文明批判にもなっていると思う。
この他、妻が次第に巨大化し太古から生存する巨人族として海に戻る話、辺地の惑星に赴任する女性ドクターが転移装置の設定ミスでたどり着いた星で人を救うストーリ等がある。
少しノスタルジックな感じはするが、シンプルでピュアな感じのする物語が多いと思う。
SF1584
2006年10月15日 発行
発行所 (株)早川書房
ISBN4-15-011584-2
C0197 \800