池澤 夏樹 著
「人生で、一つ大きな間違いをした。それを公開するかしないか判断してくれ。」と言残して、隠してあったCDを美汐に託して父が亡くなった。
美汐の父耕三は、30年以上、漁師として、島で過ごし、外に出ることもほとんどなかった。
母も結婚する以前の父のやっていたことは聞いていなかった。しかし、二人の結婚式の夜、父は「俺に何かあったら、海に捨ててくれ。病気で死んだら、誰かが取りに来る。」と言って封筒の話をしていた。
葬儀の後、郵便局員の行田が、封筒を取りに来た。行田は、郵便局員に成り済まし、父を長年監視していた公安の警察官だった。
持ち帰った封筒には、開封された跡があった。封筒には、機密のデータが記録されたフロッピーが入っていたが、コピーされたようだ。
公安警察は、耕三が、コピーを作り保管していたと考え、家宅捜査するが見つからない。
父の遺言とも言えるCDを美汐は、家宅捜査の前に別の場所に隠していたのだ。
コピーを見つけることのできなかった公安警察は、美汐を、父の死期を早めた尊属殺人の容疑で、指名手配する。
美汐は、父耕三のCDを読むため、また、過去に父に起きたことを知るため、警察の目を避けて、過去の父を知る人物にたどり着こうとする。
瀬戸内海の島々に住む知人や新聞記者の竹西の助けによって、きわどい所で、逃げ続ける。
父が参加したプロジェクトのリーダーとプロジェクトを立ち上げさせた大物政治家にプロジェクトの目的、打ち切りになった経緯を問う。
逃亡サスペンスと国防政策の信義を問うストーリーであった。長編であるが一気に読ませられた。
2014年2月10日 発行
発行所 毎日新聞社
ISBN978-4-620-10801-8
C0093 \1900E