G.K.チェスタトン 著
中村 保男 訳
先月末に読んだボルヘスの作品のなかで、触れられていたチェスタトンの「見えない人間」（本書では「見えない男」）が含まれている本書を読んで見た。
小男のローマ・カトリックの神父が主人公の短篇推理小説集である。
本書では、12の作品が収録されている。
コナンドイルのホームズシリーズにも匹敵するトリック作品である。
ひとたび事件が起きると、冴えない神父さんが、事件の表向きの事象ではなく、客観的事実をおさえて、矛盾のない真実を解き明かす。
上で、紹介した「見えない男」では、一人の女性を巡って、脅迫された男を守ろうとするが、複数の人が、見守っている中で、その男が消えて、死体で見つかる。
見えない男が押し入ったのだろうか？
神父が、見守っている人の盲点を指摘し、見えない男を明らかにして解決する。
事件の解決の他に、面白いと思ったのは、シリーズの最初の方で、天才的犯罪者フランボウと知恵比べをして事件を解決するが、ブラウン神父に敗れたフランボウが神父と友人となり、しかも、探偵となって、事件の解決に協力することだ。
事件の真実を知ろうとするが、人は憎まないという、神父の信条が出ていると思った。
トリック解決のストーリーは面白かったが、訳が古いためか、言葉遣いや言い回しが少し分かりにくくて、読むのに少し苦労した。
新版が出版されたようなので、読みやすなっているのだろうか？
1982年2月19日 初版発行
発行所 (株)東京創元社
ISBN4-488-11001-0
C0197 P430E