寺田 寅彦 著
寺田寅彦の随筆集である。おそらくたくさんの随筆からセレクトして一冊にしたものだと思う。
物理学者だけあり、細かい観察と鋭い観点で、事象が記されている。
冒頭の短い作品であるが、「線香花火」では、線香花火の点火から、最後の火玉の落ちるところまで、花火の微妙な変化を、魅力的に描いている。
芸術的、かつ、音楽的な表現で、読者を共感させる。
また、線香花火のこの化学的、物理的現象は研究課題になるだろう。この面白い現象が研究されていないのが不思議だと記す。
「津波と人間」では、大きな津波が繰り返し起き、都度大きな被害を出している。
これほど繰り返し起きているのであれば、対策が十分行われていて当然だが、何年かすれば、忘れてしまう。
記録の碑なども、やがて、移動されたり、埋もれてしまうと警告している。
世界有数の地震国として、小学校では、毎年地震教育が必要だと訴えている。
絵画にも興味があるようで、「自画像」では、思うように書けないもどかしさ、また、絵画に対する考察をいろいろな視点から書いている。
2015年12月11日 初版第1刷発行
2017年9月20日 初版第4刷発行
発行所 株式会社平凡社
ISBN978-4-582-53151-0
C0095 \1400E