デルフィーヌ・ミヌーイ 著
藤田 真利子 訳
シリアのダラヤという町の話である。
シリアは内紛で、政権側と反体制派の人々の争いが起きている。
しかし、単純な２派の戦いではないことが問題を複雑にしているようだ。
反体制側には、政府の強権的政治に反対し、民主化を求める一般市民とISなどのテロ集団がいる。
ダラヤでは、自由を求める市民が、反政権デモなどを行い、籠城するが、政権側がダラヤは、反政府のテロ集団の町として、包囲し、外界から孤立させる。
外界から隔離された若者たちが、政府軍の攻撃で、瓦礫に埋まった市民の本を掘り出し、地下に秘密の図書館を作り始める。
地下図書館の写真をFacebokで、見た著者が、インターネットのアプリのスカイプやワッツアップなどを使って、地下図書館を作った若者たちから話を聞いてまとめたのが本書である。
ノンフィクションのルポの一種なのだが、著者は現地には行っていない。
反政府ということで、テロリストのレッテルを貼られたダラヤの市民は悲惨である。
子供や女性などを含み戦闘行為をしていない市民を町ごと抹殺するかのような政権側の空爆が続く。
最後には、地下図書館を作った若者たちも、町を放棄せざるを得なくなるが、外界から隔離された若者たちの知識欲は衰えなかったことに感動する。
シリア内戦の一面だと思うが、政府、テロ集団、諸外国などの複雑な関係が内戦の解決を難しくしているのだと思った。
2018年2月28日 初版
発行所 （株）東京創元社
ISBN978-4-488-00387-6
C0022 \1600E