吉田 篤弘 著
少し不思議な小説であった。
主人公の曇天先生と助手のアノウエ君が絵画の世界に入り込んでしまう。
最初は、曇天先生が、アノウエ君からもらったメオサラ（目薬）を挿したところか始まったようだ。
絵画の世界は、絵の奥の方で、繋がっているようだ。
絵の中の人物もその繋がりを通して、絵から絵に、移動しているようだ。
曇天先生の空想（夢）なのか、現実の世界なのかもよくわからない。
しかし曇天先生は、絵の中の世界（二次元）と絵の外の世界（三次元）の違いを考察する。
絵の中の世界に留まっても良いとも思うが、やはり、絵の中の世界の奥は死につながっているのではないかと思い、絵の外の世界に戻ろうとする。
あとがきに50歳を機に書いたとあるが、小説家として、生と死、自由と理屈など、結論の出ない問題にさらに取り組んでいくと言う思いの様な気がした。
2017年1月25日 初版発行
発行所 中央公論新社
ISBN978-4-12-206350-1
C1193 \740E