津村 記久子 著
表題作も含む7篇からなる短編集である。どの作品もゆるい感じで、気軽に読める。
もしかしたらあるかもしれない、あるいは、そう思えるかもしれない日常生活の出来事を描いた作品とすごく人間的だが実際にはあり得ない地獄や幽霊を描いたファンタジー的な作品がある。
例えば、表題作は、海外旅行の出発を目前に控えた主人公の老人が、突然、心不全でなくなるが、海外旅行が心残りで、あの世にいけなくなってしまい、なんとかして、目的地のアイルランドのアラン諸島に行こうとする物語である。
幽霊になって、どこにでも行けそうなものであるが、電車に乗ろうとしても、すり抜けてしまい、遠くには行けない。
ひょっとしたことから、耳から入り込んで、人に取り憑くことができることを発見して、人を頼りに旅をすることを思いつくが、なかなか思い通りのところに行くことはできない。
表題のブラジルに連れていかれることになる。果たして、アラン諸島にたどり着いて、成仏できるのか？
2016年10月20日 第1刷発行
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN978-4-16-390542-6
C0093 \1300E