小林 エリカ 著
残念ながら、新型コロナウイルスの拡大のため、延期になったが、物語は、Tokyo2020オリンピックの開催も題材となっている。
本書のメインテーマは、放射能である。
東日本大震災の後から、放射能を発するものに執着する老人たちが現れ、奇妙な行動する。
彼らは、放射線を発する黒光りする黒い石を握りしめている。この病は、トリニティと名付けられた。
放射能に、汚染された紙幣をばらまく老人などが現れる。
主人公は、施設にいる母と高校生の娘がいる。母が、行方不明になり、トリニティになっているのではないかと心配し探し回る。
トリニティについて、調べるうちに、同名のサイバーセックスサイトにたどり着き、アクセスするようになる。
原爆の実験された土地もトリニティと呼ばれたようだ。
母は、娘（孫）の携帯を持って施設からいなくなった。携帯の所在を表すアプリによれば、オリンピックの開催される新国立競技場付近にいるようだ。
国立競技場近くで、携帯を見つけるが、母は見つからない。
見つけた携帯から、トリニティのサイトは、高校生の娘が、絡んでいることがわかる。
主人公は、現場で、倒れ救急車に乗せられる。主人公は、母を探す娘のようだが、冒頭に描かれる施設の老人が娘自身のようでもある。
昨年書かれた小説なので、ごく近い未来を描くSF的な小説であった。大きな事件は無いが、放射性物質に侵された世界が不気味な感じがした。
2019年10月30日 第1刷発行
発行所 株式会社集英社
ISBN978-4-08-771682-5
C0093 \1700E