森見 登美彦 著
500ページを超える長編なのとストーリーが込み入っているので読了に時間が掛かった。
筆者の森見と思われる登場人物が、学生時代に古書店で、1982年出版、佐山尚一著の「熱帯」という本に出会ったところから話が始まる。
読み始めたその本は、目を覚ますと消えてしまい、最後まで読むことはできなかった。
16年後、沈黙読書会というイベントに誘われ、そこで、「熱帯」を持つ女性に出会う。
女性は、「この本を最後まで読んだ人はいないんです」と言い、「沈黙」にまつわる話を始める。
「沈黙」について、調べようとする人たちが集まり、自分たちを学団員と名乗り、自分たちがかつて「沈黙」を読んで、記憶していることを話し合う事により、「沈黙」の全体像に迫ろうとする。
「沈黙」について、調べるため京都に行った女性を追って京都に行った男性が残したノートに、それまでにわかったことが記されている。
熱帯の島に行って、不思議な経験をした。その世界がどう言う世界なのか、そこにいる人々、自分が誰なのか？誰が経験したことなのか？
最後に、ノートの中にも出てきた佐山と思われる人物が、登場し、読書会に参加する。
そこで、女性が、取り上げる本が、森見登美彦の「熱帯」である。
ストーリが、螺旋を描き、新しい「熱帯」に成長したようだ。
本書にたびたび登場する「千一夜物語」もこのように、物語を語った人々が、物語を成長させて行ったのだろうか？不思議な物語であった。
2018年11月15日 第1刷発行
2018年12月15日 第2刷発行
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN978-4-16-390757-4
C0093 \1700E