中島 京子 著
フリーの雑誌記者だった主人公は、上野公園のベンチで、少し変わった、自由気ままな感じの白髪の女性喜和子に話しかけられる。
小説を書いていると話すると「上野の図書館のことを書いてみないか」と言われる。
主人公は、喜和子と折々に交流を深めてゆき、住まいにも訪れ、付き合いのある人々と知り合いになるが、喜和子自身の生い立ちや人生については、断片的にしか語られない。
しばらくぶりに、喜和子の家を訪ねた主人公は、家が無くなり、喜和子が老人施設に入っている事を知る。
施設に喜和子に会いに行くと、喜和子の娘がいる。主人公の知らない喜和子の人生があった事を知る。
やがて、喜和子が亡くなったとの連絡が入る。主人公は、喜和子と付き合いのあった人々と偲ぶ会を開く。
そこで、喜和子との思い出が語り合われる。戦後喜和子が小さかったとき、上野のバラックで、知らない復員兵のお兄さんと生活していたと話していたそうだ。
また、喜和子が主人公へ残した物語風の書き物と喜和子宛のなぞなぞを書いた葉書が残されていた。
主人公は、残された物や知り合った人々から聞いた話などから喜和子のこれまでの人生をたどる。
喜和子の人生をたどる物語は、ミステリを読むような面白さがあった。
また、喜和子の書きたかった「夢見る帝国図書館」の物語が、喜和子の人生をたどる物語の合間合間に描かれる。
2019年5月15日 第1刷発行
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN978-4-16-391020-8
C0093 \1850E