ブレイディみかこ 著
著者は、ロンドンから電車で１時間くらいの街ブライトに住んでいる。ブライトンは、イギリス有数の海浜リゾートであり、観光施設も多いそうだ。
本書は、著者の周りおっさんたちの有り様を描く。おっさんたちは、著者の連れ合いと同年代（'56年頃の生まれ）の人たちである。
おっさんたちは、いわゆる労働者階級ということであり、現在、イギリスでは、嫌われている存在らしい。
筆者によれば、時代遅れ、排外的、ポリティカルコレクトネス的問題発言、EU嫌いな右翼っぽい愛国者と見られているようだ。
しかし、実際には、いろいろなおっさんたちがいて、イギリスやそれぞれの人生を背負ってたくましく生きている。
イギリスは、昔は、ゆりかごから墓場までといわれた手厚い公共サービスが提供されていたが、緊縮財政政策への変更により、公共サービスの大幅圧縮が行われた。
その結果、労働者階級と言われる一般の人々の生活は大きな影響を受け、社会の競争が激化し、医療も受けづらくなった。
EUの緊縮政策やEUへの資金の支払いが、イギリスの公共サービスの低下の要因になっているのではないかということで、ベビーブーマー以上の世代の人がEU離脱に賛成したようだ。
また、EU離脱問題が、世代間の対立や移民への反発ももたらしているようだ。
著者は、登場するおっさんやその周りの人々に敬意を払うとともに、優しく捉え、激しく変化しているイギリスの現在を描いていると思った。
2020年6月5日 初版第一刷発行
発行所 株式会社 筑摩書房
ISBN978-4-480-81550-7
C0095 \1350E