紀 蔚然（き うつぜん） 著
舩山 むつみ 訳
プライベートアイとは、私立探偵のことである。
主人公の呉誠は、19歳の時に、突然発作に襲われ、不眠症になる。
のちにパニック症候群だとわかるが、いつ発作に襲われるかわからず、常に強いストレスを感じている。そして、人の内面を鋭く見抜くようになった。
劇作家で、演劇系の大学教授になっていたが、辛辣な呉誠の言動によって、妻に見捨てられ、演劇界とも縁を切ることになる。
台北市の外れの古びた街に移り、私立探偵を立ち上げた。
最初の依頼は、娘が夫を突然避けるようになった原因を調べて欲しいと言う妻の依頼だった。
夫の行動が怪しく、不倫かと思われたが、もっと他の問題があることが分かる。
調査を通して、近所の自動車修理工場の家族やタクシー運転手、派出所の警察官と知り合いになり、仲間ともなる。
近隣で、殺人事件が、連続する。関係のない事件と思っていたが、突然、呉誠が容疑者として、警察から尋問される。
呉誠がいつも散歩で行く公園で、呉誠と二人の被害者が一緒に防犯カメラに映っていたとのことである。
呉誠は、嫌が応にも、事件に巻き込まれて行く。
事件の解明とともに、台湾の人々の日常や心の内面もしっかり描いている。
著者は、台湾大学戯劇学系の元教授であり、呉誠は、自身の姿、内面を投影しているようだ。
2021年5月15日 第1刷発行
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN978-4-16-391367-4
C0097 \1800E