逢坂 冬馬 著
独ソ戦で戦ったソ連赤軍の女性狙撃隊の物語である。
1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす主人公の少女セラフィマは、ドイツ軍の急襲で、母親や村人全員を惨殺される。
セラフィマは、赤軍女性兵士イリーナに助けられるが、女性兵士の隊に、母親の遺体もろとも、村全体を焼かれる。
セラフィマは、母親を狙撃したドイツ軍狙撃兵とイリーナへの復讐を心に誓い、イリーナが教官を務める訓練学校で、狙撃兵となる。
同じ環境で、訓練生となった女性達と、狙撃隊が結成され、スターリングラードの前線に向かう。
物語では、隊の仲間を失いつつも、赤軍の勝利に貢献し、最後に、ドイツ軍狙撃兵を追い詰める。
そこで、狙撃は終わりになるかと思ったが、最後に、セラフィマが狙撃したのは、別の兵士だった。
単純に敵味方と言う図式で描けない複雑さを感じた。
特に、本書では、女性兵士と言うこれまでの戦争小説とは異なる視点を感じた。
戦争中の、両軍の性暴力、戦争が、終わった後、嫌われた女性兵士、また、戦闘がトラウマとなり、精神を病んだ女性たちなどの物語も描かれる。
また、戦争の舞台が、ウクライナからロシア南西部地域であり、今、軍事侵攻されているウクライナの戦争も想起させる物語であった。
2021年11月25日 発行<
発行所 株式会社 早川書房
ISBN978-4-15-210064-1
C8745 \2200E