乗代 雄介 著
「皆のあらばしり」と言うタイトルは、聞きなれない言葉である。
皆は、地名（下野国都賀郡皆川、現在の栃木県栃木市皆川城内町）から、あら（荒）ばしりとは、日本酒をしぼったときに一番初めに出てくるお酒のことをさすそうである。
主人公は、高校の歴史研究部に所属する学生だ。
主人公が皆川城を調べていると30代の男に声をかけられる。
男は、歴史に関して博識で、明治期の地誌の下書きや旧家の蔵書目録に関心を持つ。
男は、地元に関わりのある主人公を利用して、旧家にあるかもしれない小津久足著の「皆のあらばしり」について調べる。
蔵書目録にはあるが、その他どこにも記録は見当たらない本だ。実際に存在する本なのか、偽書なのか。
主人公は、男の博学に憧れ、男の言うがまま動いているようだが、「皆のあらばしり」を見つけることができるだろうか。
最後の主人公と男のやり取りがスリリングで、ミステリーのようなおもしろみがある。
2021年12月20日 発行
発行所 株式会社新潮社
ISBN978-4-10-354371-8
C0093 \1500E