木村 紅美 著
あなたに安全な人（出版社サイト）
元教師で、両親がなくなり、実家に戻ってきて、一人で住む妙と実家の蔵に住む便利屋の忍の二人が主人公であり、人を死に至らせたのではないかと言う共通点がある。
妙は、教え子が、海で亡くなったが、それが、いじめのせいで自殺したのではないかと自責の念に駆られている。
忍は、警備会社で働いていた時、平和活動していた野鳥研究家の女性と揉み合いになり、押し倒してしまった。その女性は、後に、脳障害を起こして亡くなったらしい。
妙は、風呂の排水が詰まり、便利屋の忍を呼んだのがきっかけで、その後、いくつかの仕事を依頼する。
舞台は、東北のおそらく岩手県で、他県で、新型肺炎が広がっていて、初感染者が出ることが心配されている頃だと思う。
二人は、離れて言葉を交わし、直接接触しないようにしたり、消毒したりする。
妙の家の近くで、東京から移住してきた人が、住まいとするはずのマンションに住民の反対で、新型肺炎の感染が収束するまで、入居を拒まれ、廃業したクリーニング店の二階に入居したが、亡くなると言うことがあった。
東京から来た二人は、地元の人や家族からも疎まれる。また、妙は、亡くなった生徒の親から狙われているのではないかと思ったりする。
妙は、忍に、家の周りを近所の人に分からないように、見守ってくれるように依頼し、その代わり、寝食を提供する。
二人は、奇妙なディスタンスを取った生活を続ける。
タイトルの安全な人というのはお互いに安全な関係ということだろうか？少し奇妙な関係の二人を描いた物語であった。
2021年10月30日 初版発行
発行所 株式会社 河出書房新社
ISBN978-4-309-02997-9
C0093 \1670E