安東 きみえ 著
田中 千智 装画
本書は5篇の短編から構成される。いずれも少し不気味で、怖いところがある。
「川釣り」には、魚の命を弄ぶ少年が登場する。
「青い金魚鉢」では、心が金魚鉢に閉じ込められたような少女が登場する。
「鬼が守神社」では、自分の夢と慕う女の子の願いを叶えるために丑の刻参りをする女の子が描かれる。
「スノードロップ」には、友達が落としたゲームカードを自分のものにした少年が、それを目撃したのではないかと思われる老人を疎ましく思う。
「果ての浜」は、西表島に塾の春休みの学習ツアーに行った少年が、戦争中に波照間島から強制的に移住させられた子供達がマラリアで大勢亡くなったという話を聞き、子供たちの遊ぶ声を聞く。
5篇は、夜叉神川や川の流域に暮らす子どもたちの話の連作になっている。
どの作品でも、登場人物の心の闇の部分も描かれている。
「果ての浜」は、実際の戦争の歴史を踏まえており、物語の場を借りて、戦争の悲惨さを伝えるものになっていると思う。
2021年1月26日 第1刷発行
発行所 株式会社講談社
ISBN978-4-06-521852-5
C8093 \1400E