泡坂 妻夫 作
表題作を含む7編の短編ミステリー集である。
表題作以外は、「芍薬に孔雀」「飛んでくる声」「可愛い動機」「金津の切符」「広重好み」「脊泉さん」である。
どの作品も、語り口調で書かれ、凝ったトリックが仕組まれていて、意外な結末になる。
表題作は、暴力団の組長が殺される事件である。室内にある電話機のダイヤルが、事件解決の糸口になる。
室内の指紋は、きれいに拭き取ってあったが、電話機のダイヤルを消しゴム付きの鉛筆で、回した跡が残っていた。
1から7までの番号にこすられた後があった。犯人が、1から7までの番号を含む電話番号に電話をしたと推定される。
電話番号簿で、指紋が拭き取ってあった「常用のページ」には、候補の番号が2箇所あったが、どちらにもかけられていなかった。
果たして、どこへ電話をかけたのだろうか？
ダイヤル式の固定電話と消しゴム付き鉛筆、電話番号簿と言う現在あまり使われない設定であったが、凝った謎解きであった。
スマホの時代だったら、どんなネタを仕込んでくれたのだろうか？
45年以上前の出版であるが、凝った仕掛けや逆転の見方が面白い作品集であった。
1985年12月20日 初版第1刷発行
発行所 株式会社 光文社
ISBN4-334-92122-1
C0093 \980E