オルガ・トカルチュク 文
(Olga Tokarczuk)
ヨアンナ・コンセホ 絵
(Joanna Concejo)
小椋 彩(おぐら ひかる) 訳
トカルチュクは、ポーランド生まれで、2018年にノーベル文学賞を受賞している。
ものすごくよく働く人がいた。
ある時、彼は、自分のことがわからなくなった。
賢い老医者は、言った。
忙しく走り回る人で、世界は溢れかえっている。彼らの魂は背後に置き去りにされて、迷子になっている。
魂が自分の主に追いつけない。人々は魂を無くしていることに気がつかない。
どこかに落ち行ける場所を見つけて、そこでじっくり自分の魂を持つべきです。
彼は、町はずれに小さなコテージを見つけ、何もしないで、待った。
何年もたった午後、誰かがドアをノックした。彼の迷子になった魂が立っていた。疲れて、汚れて、傷だらけだった。
それから彼らは幸せに暮らした。彼は、急ぎすぎないようにした。
時計とスーツケースを庭に埋めた。時計は、鐘の形の綺麗な花を、スーツケースは、カボチャの実をつけた。
穏やかな冬がめぐるたびにカボチャを食べて暮らした。
忙しい大人に向けての絵本だと思う。じっくり立ち止まって、自分を失わないようにすることの大切さを描いていると思った。
2022年11月5日 第1刷発行
発行所 株式会社 岩波書店
ISBN978-4-00-024832-7
C0797 \2500E