下村 敦史 著
改修のため、明日で、100年の歴史を一旦閉じるヴィクトリアン・ホテルに集ったそれぞれ思い出のある客たちの一夜の物語である。
登場するのは作家、女優、宣伝マン、スリ、弁当屋の夫婦などである。
物語の各章に登場人物の名前が付いている。最初、物語は、時系列に描かれているのだろうと思って読んでたが、途中から、話のつながりがおかしいと感じるようになった。
同じ人物名の章なのに、次に出てきた時に、前の章とは別の物語が語られる。
これは、本の最後の方で、理由がわかり、本作品の醍醐味になっていると思う。
本作品では、良いこと、悪気のないことをしていても、それが、他の人を傷つけることがあると、攻撃されることがあると何人かの登場人物が語る。
しかし、最後に、その良いこと、優しさを喜ぶサイレントマジョリティがあること、被害者を責めることがあってはならないということを語らせている。
ミステリーではないが、ミステリー的なおもしろさのある物語でした。
2021年3月5日 初版第1刷発行
発行所 株式会社実業之日本社
ISBN978-4-408-53776-4
C0093 \1600E