ジェームズ・サーバー 作
(James Thurber)
村上 春樹 訳
原書は、1939年に11月に刊行されたものだそうだ。
その年の9月に、ナチス・ドイツ軍がポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発した。
戦争が起きる不安の中で、世界平和を願って描かれた絵本であるが、この絵本が書店に並んだときには、世界は既に、激しい戦火に巻き込まれていた。
絵本で描いたことが、実際に起きていることに作者の虚しさがあったことが想像できると訳者が述べている。
そのストーリーは、戦争が起きて、すべてのものがなくなってしまう。
最後に残った花も死にかける。
それを見つけた、娘が、他の人に言って回るが、興味を持ってくれたのは、よそから来た一人の若い男だけだった。
若者と娘が花に養分を与え、花は元気を取り戻す。
地上に緑が戻る。そして、世界に愛が再び生まれた。
しかし、増えた人々が、また戦争を起こしてしまう。
世界には、何一つ残らなかった。
ひとりの男性とひとりの女性と一本の花だけは別にして。
すべてを失った人々が平和な世界を築かず、また、戦争をするという話は、虚しいものを感じる。
戦争の悲惨さを知っているはずなのに戦争を行うという愚かな行動を自ら戒める必要があると思う。
2023年6月12日 初版発行
発行所 株式会社ポプラ社
ISBN978-4-591-17810-2
C0097 \1600E