万城目 学 著
八月の御所グラウンド（出版社サイト）
本書は、表題作と『十二月の都大路上下(カケ)る』の2編で構成される。
どちらも京都を舞台にし、スポーツがテーマである。
『十二月の・・・』は、女子全国高校駅伝の補欠として京都にきた坂東が主人公だ。
補欠と思って安心していたが、先輩が、貧血で調子が悪いため、急遽アンカーとして走ることになる。
しかし、坂東は、ひどい方向音痴で、応援ポイントを見に行っても迷子になってしまうくらいである。
本番レースの5区スタート地点で、赤いユニフォームの選手に闘志を燃やす。
走り出すと、歩道で応援する人の後ろを着物を着た7、8人の男が走ってくる。しかもちょんまげまで結っている。
気を取られて、コースの曲がる方向が分からなくなってしまい、左に曲がろうとした時、「右だよ、右！」と言う声がしてコースに戻る。
レースの翌日、赤いユニフォームの選手とレース中、二人が見たものの話をする。そして、来年の再会を誓う。
『八月の・・・』のは、彼女に振られ、うだる暑さの京都で、夏を過ごす朽木が主人公だ。
留年している多聞に頼み込まれ、朽木は京都御所で、6チームによる野球のリーグ戦たまひで杯に参加することになる。
たまひで杯は、昭和の時代に祇園の芸妓に心励まされた者たちが代表となってチームを作り野球大会を開いているのだ。
代表は、大学教授や祇園などに店を持つ社長などである。
多聞・朽木のチームはメンバーが揃わなく、急遽その場にいる人などを集めて試合をする。
集まってきた人の中に、えーちゃんとその知り合いの遠藤くん、山下くんという人たちもいる。
えーちゃんは、すごい球を投げ、沢村栄治に似ている。遠藤くんは朽木と同じ大学の法学部生らしいが、今の名簿にはいない。
学徒出陣した同姓の学生がいた。たまひでママ名前は山下で、お兄さんがいた。
2編とも、思いを残して去った過去の人が現代に登場したのだろうか？
2023年8月10日 第1刷発行
発行所 株式会社 文藝春秋
ISBN978-4-16-391732-0
C0093 \1600E