辻堂 ゆめ 著
答えは市役所3階に 2020心の相談室（出版社サイト）
コロナ禍を受けて、市役所の3Fに開設された『2020こころの相談室』に持ち込まれた相談を連作短編として描いた物語である。
心の相談室には、若いけど経験や分析力のある臨床心理士の晴川あかりと年配で認定心理士の資格を得たばかりの正木昭三のコンビがいる。
持ち込まれた相談が5編の物語となっている。
第1話：就職希望の女子高校生が、コロナ禍によって、希望する就職先を見つけることができない。また、出場を目指して練習していたNHK全国学校音楽コンクールも中止になってしまい、将来の夢を失ったという相談。
第2話：コロナ禍で、看護師をめぐる差別によって、婚約者を失ったという相談。
第3話：夫が仕事と言って帰ってこなくなり、コロナ禍の病院で、一人で、出産を迎えた女性の相談。
第4話：コロナ禍で、仕事が減ってしまい、公園で寝泊まりし、若者に襲われるのではないかと不安襲われる男性の相談。
第5話：オンライン授業ばかりで、人とも会えず、生きる気力を失った若者の相談。
心の相談室へ持ち込まれる相談は、どれも話されていることが全てを語っているわけではない。
語られていないこと、現実を避け変えて語っている内容などがある。
各話の最後に、臨床心理士の晴川が、相談者の真実の姿を謎解きしてくれる。
ミステリー小説的な謎解きな楽しい小説であった。
2023年1月30日 初版1刷発行
発行所 株式会社 光文社
ISBN978-4-334-91505-6
C0093 \1600E