ジャン＝クロード・グランベール 作
(JEAN=CLAUDE GRUMBERG)
河野 万里子 訳
ホロコーストをテーマにした物語である。
貧しい木こりのおかみさんが、毎日、通る貨物列車に希望を繋いで、お祈りしていた。
ある時、貨物列車から、美しいショールに包まれた赤ん坊がおかみさんに向けて投げられた。
おかみさんは、願いが叶ったと赤ん坊を懸命に育てる。乳の出ないおかみさんは、森の奥に住む恐ろしい男を訪ねる。
男は、森の中で、誰とも会わず、生きているが、ヤギの鳴き声がしたので、乳を求めたのだ。
おかみさんは、薪を届けることを条件にヤギの乳をもらい、赤ん坊を育てた。
木こりのところに、無届の子どもがいることが知られて、民兵に赤ん坊が連れていかれそうになる。
木こりが斧で守るが、銃で撃たれてしまう。おかみさんは必死に赤ん坊を抱えて、森に逃げこむ。
そして、森の男に助けられるが、やがて、兵士が、森にも来て、森の男も撃たれてしまう。
おかみさんと赤ん坊は、残されたヤギの乳で、チーズを作り、生計を立てる。
赤ん坊を捨てた男は、収容所で、一人生き延びたが、家族を全て失い、赤ん坊を捨てたことに対して罪の意識を持つ。
なんとか、捨てた赤ん坊のその後を探し回る。チーズを売るおかみさんと娘に会う。娘の目を見て全てを知る。
著者自身が、父、祖父とも貨物列車で送られた移送者の子孫だそうだ。
一人の赤ちゃんの命を懸命に守った人の物語だ。
2020年10月5日 第1刷発行
発行所 株式会社ポプラ社
ISBN978-4-591-16663-5
C0097 \1400E