石田 夏穂 著
我が手の太陽（出版社サイト）
溶接工の物語である。溶接について、ほとんど知らない。本作は、溶接のプロセス、難しさを細かくリアリティを持って描いている。
物語は、ベテラン溶接工の伊東が突然スランプに陥り、欠陥率が高くなる。
欠陥を指摘され、挽回しようと、動きを制約する命綱を外して作業してしまう。
それを見咎められて、溶接作業から外されてしまう。そして、解体現場の溶断作業に回される。
溶接工として、プライドの高い伊東は、溶断作業を受け入れることができない。
溶接作業時に溶け煙状になった金属が、肺に障害を起こさせるヒューム肺となっている先輩に無理を言って、溶接作業を回してもらう。
しかし、目指す溶接を行おうと焦れば焦るほど、ミスを起こしてしまう。
スランプによる悪循環がどこまで落ちて行くかが怖い物語であった。
2023年7月11日 第1刷発行
発行所 株式会社講談社
ISBN978-4-06-533076-0
C0093 \1500E