ジャンニ・ロダーリ 作
(Gianni Rodari)
ペフ 絵
(Pef [Pierre Elie Ferrier])
アーサー・ビナード 訳
(Arthur Binard)
長い戦争が続いている。終わりが全く見えない。
金属が無くなり、鉄砲や大砲を作ることができなくなった。
軍のトップが命令を出した。
「国中の時計塔からも教会からも学校からもベルやかねを集めて、世界一でかい大砲を作れ。一発くらわしたら戦争に勝てる。」
巨大な大砲ができた。前線まで運ぶには、百台のクレーン、百両の機関車が必要だった。
狙いを定めて、発砲のボタンを押した。すると、突然不思議な音が響き出した。「キン！ コン！ カン！」 国中に響き渡った。
大将は、ひどく腹を立てて、頭に血がのぽって、少なかった髪の毛が抜けてしまった。
大砲の音が静かになったと思ったら、前線の向こうから明るい楽しげな音色が流れてきた。「キン！ コン！ カン！」
敵軍のトップも同じことをやらせていたようだ。
こっちの大砲が「キン！ コン！ カン！」と鳴れば、向こうの大砲も「キン！ コン！ カン！」
こっちの兵隊も向こうの兵隊も武器を捨てて踊り出した。「平和勃発のお祭りさ！」
両方の大将は逃げ出したが、「キン！ コン！ カン！」はずっと追いかけて行った。
教会の鐘まで武器にする愚かさを戒めた絵本である。
2010年8月6日 第1刷発行
発行所 株式会社 講談社
ISBN978-4-06-132433-6
C8771 \1500E