江戸川 乱歩 原作
藤田 新策 画と文
「少年探偵」・「怪盗ルパン」シリーズなどの挿絵を手掛けた作者が、乱歩の表題作を絵本にしたものである。
富山県の魚津に蜃気楼を見に行った主人公が、帰りの汽車の中で、奇妙な男に会う。
男は、絵のようなものを汽車の窓から外に向けている。
男は、目が合うと、これをご覧になりたいのでございましょうと奇妙な押絵を見せた。
押絵には白髪の老人と老人にしなだれかかる17、8の美しい娘が浮き出ている。
2人の男女の押絵は巧緻たるもので、髪にしても本物の毛髪を埋め込んである。
私が感じた奇妙とは、押絵の人物が生きていたことだ。
男は、絵の中の男女の身の上話として、世にも不思議な物語を話し始めた。
語り終えた男は、押絵をソッと風呂敷に包み、山間の小さな駅で、降りた。
その後ろ姿は、押絵の老人そのままの姿であった。
少し生々しい絵で描かれた奇妙なストーリーの絵本であった。
2023年5月30日 初版発行
発行所 あすなろ書房
ISBN978-4-7515-3120-4
C0793 \2300E