村雲 菜月 著
もぬけの考察（出版社サイト）
4話からなる短編連作である。
いずれも同じマンションの408号室の住人にまつわる物語だ。
第1話『初音』の冒頭から「初音の趣味は蜘蛛を飼い殺すことである。」という不穏な出だしから始まる。
408号室の住人は、突然いなくなってしまうようだ。管理会社も怪しげだ。
住人が引っ越してくると408号室の郵便受けには、前の住人宛と思われる郵便物やチラシがたくさん溜まったままになっている。
初音は、出社できなくなり部屋にこもっていると、ドアも開かなくなってしまう。ベランダ越しに409号室に移ろうとする。
第2話の末吉は、大学入学後時間を持て余し、手当たり次第女に声をかける生活をしていた。
そして、一人の女が末吉の世話をしにくるようになるが、煩わしくなる。女の淹れたコーヒーを飲んだ末吉は意識を失う。
第3話では、住人が友人に文鳥のこがねの世話を頼まれる。住人は文鳥の鳴き声に我慢できなくなり、部屋を出てしまう。
第4話の住人は、画家である。部屋の壁に、自分の部屋を模写している。模写の終わった机などは処分していった。
そして、自分自身を壁に描き、部屋の一部になってしまう。
少し不気味な物語であった。
4話は、順番に繋がっていて、部屋の一部になった人の前の住人が初音のようにも読めるが、そうするとループしてしまい。
いっそう不思議だ。
2023年7月27日 第1刷発行
発行所 株式会社講談社
ISBN978-4-06-532685-5
C0093 \1400E