森見 登美彦 著
シャーロック・ホームズの凱旋（出版社サイト）
シャーロック・ホームズの舞台を著者の土地勘のある京都に置き換えたホームズ・パロディー小説である。
原作のシャーロック・ホームズに登場する人物や事件・出来事が方々に散りばめられている。
ハドソン夫人やアイリーン・アドラー、モリアーティ教授、レスレード警部などお馴染みの人たちが登場する。
本書に登場するシャーロック・ホームズは、寺町通221Ｂに住むが、スランプに陥り、下宿に閉じこもっている。
落ち込むホームズを元気付けようとワトソン医師が世話を焼くが、新たな事件解決はできない。
事件の記録者ワトソンは、新たな作品を出版できず、「シャーロック・ホームズの凱旋」という物語を書き始める。
「シャーロック・ホームズの凱旋」は、ロンドンが舞台であり、この世界に、ワトソンが入り込み、物語の世界と現実の世界が混沌となる。
作中では、モリアーティ教授が、ロンドンを牛耳り、ホームズを葬ろうとする。ワトソンがホームズを助け出そうとする。
物語の世界であるロンドンでの出来事が、京都での事件の解決につながる。
以前読んだ『熱帯』という小説とも似たところがある作品だった。
推理小説というより、著者得意の物語と現実が混ざり合った妄想のような不思議な世界を描いた小説である。
2024年1月25日 初版発行
発行所 中央公論新社
ISBN978-4-12-005734-2
C0093 \1800E