芦辺 拓 江戸川 乱歩 著
乱歩殺人事件ーー「悪霊」ふたたび(出版社サイト)
「悪霊」は、江戸川乱歩が、雑誌「新青年」の1933年11月号から、長編ミステリー小説を目指して執筆し始めたが、第3回の1934年1月号までで、執筆をやめてしまったものだそうだ。
本書は、この乱歩の3回の原稿に、芦辺が、書き下ろしの原稿を追加して物語を完結したものだ。
乱歩の「悪霊」に関しては、同じように、分析やストーリーの完結を目指したものもあるようだ。
「悪霊」の内容は、小説家に、祖父江進一という人の書いた2冊の書簡集を無理矢理売りつけに来るところから始まる。
2冊の書簡集には、祖父江が遭遇した殺人事件について、3通の書簡が綴じられていた。
最初の殺人事件は、祖父江の参加する降霊術仲間の姉崎曽恵子未亡人が、土蔵の2階で全裸で刃物傷を受けて殺される。
土蔵は、密室になっており、鍵は、死体の下にあった。
芦辺の追加ストーリーでは、小説家が書簡を読み解き、書簡中の誰が、犯人であるか、どのように密室殺人が行われたか、なぜ事件が起きたかを解明する。
本の体裁として、乱歩の書いた部分と芦辺の書いた部分は、書体や紙の色を変えたりしてわかるようになっているが、ストーリー的には自然に繋がっていて、新たに追加したとは思えなかった。
追加して書かれた部分が、小説家と犯人と思われる「私」の視点で、描かれているためか少し混乱する所があった。
2024年1月31日 発行
発行所 株式会社KADOKAWA
ISBN978-4-04-114635-4
C0093 \1900E