著 マーガレット・アトウッド
(MARGARET ATWOOD)
訳 鴻巣友季子
本書は、訳者があとがきで書いてくれているように、老と復讐をテーマにした九つの短編からなる作品集である。
多くの作品は、高齢の男女が主人公で、若い頃の男女のもつれを引きずっており、意地悪や復讐を考える。
最初の3話は、3部作となっていて、登場人物の立場が変わり、異なる視点から描かれる。
原作の表題作の「岩のマットレス（Stone Mattres）」は、高校生の時に、デートで薬を飲まされて、犯された主人公が、
北欧クルーズの際に、相手に再会し、完全犯罪を起こすストーリーだ。
邦訳版の表題作「老いぼれを燃やせ（Torching Dusties）」は、老人施設に入っている女性が主人公である。
女性は、目が見えなくなりつつあると共に、幻覚と認識はしているが幻覚が見え、そこに自分の人生も見えるようだ。
タイトルは、老人排斥運動のプラカードの描かれている言葉だ。主人公の施設にもプラカードを持った人々が迫ってくる。
主人公の目となってくれる老人と共に、建物の玄関が見える場所で、建物が火に包まれるのを目にする。
コミカルなところもあるが、かなりブラックで、刺激的な感じの物語集であった。
2024年9月25日 初版発行
発行所 株式会社早川書房
ISBN978-4-15-210361-1
C0097 \2800E